ラ・のべつまくなし ブンガクくんと不思議の国  放課後の魔術師5  妖怪アパートの幽雅な日常10

ラ・のべつまくなし ブンガクくんと不思議の国

何かがあるから書きたい、ではなく書きたいから書く。
苦にならないから続けることができる。
そんな簡単なことに気付かず、「あれになりたい」「これになりたい」と言っていた自分が恥ずかしい。

この作品は直球勝負できてます。設定がラノベ作家だったり、腐女子だったりしますが、とっても素敵な純愛ラブコメです。

だが、この作品の影の主人公は、学でも明日葉でも、もちろん源さんでもなく……圭介なのだ。そこに注目して読んでもらえると、また違った味わいがある。

どうして圭介のような、なんちゃってチャラ男が学を応援するのか。それを少しでも知ると、もう圭介にはまってしまうだろう。


≪圭介は自分を“フシギ専”だと自認している。
 変わったやつがすきなのだ。
 なんだかよくわからないやつに、なんだかよくわからないほど惹かれてしまう。
 それはおそらく、羨望に近い感情だ。
 自転車が倒れてしまわないよう、鉄製の足をおろす。
 車高がすこしあがった勢いで、からりと車輪が空廻りする。
 街灯の下で伸びる影が、車道の白線の上でゆっくりと重なっていった。≫


主人公二人の素直でベタ恋も楽しいけど、圭介の一見すると軽く思われそうな言葉の数々が、心の底からのものだとわかってしまった時の感動はそれに劣らぬもの。

よく練られた脇役がいてこそ主役が引き立つことを再認識した本です。

ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)

ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)


放課後の魔術師
これに関しては、「特製ブックレット」を読まないと何も言えねぇ!香音の文化祭を読みたいし、表紙2枚合わせたいよー。
お願い、だれか譲ってください(涙)
持ってる方は是非コメントを……。

妖怪アパートの幽雅な日常10
詩人のなにげない一言
≪「子供が死から遠ざかったせいだろうねぇ。死から遠ざかることは、生からも遠ざかることだからねぇ」≫
真をついた言葉だと思う。


事故から目が覚めた夕士と長谷の再会
≪「また、会えたな」
重い手を差し伸べる。
長谷はその手を取ると、俺を胸に抱き込んだ。
「稲葉……!」

ああ……。
温かい。
ちゃんと生きている体。心臓の鼓動が聞こえる。力が通っている。血が巡っている。
俺を抱く長谷の全身から、こうしてまた会えた喜びが伝わってきた。俺の「生きている喜び」も、長谷の全身にぶつかって、俺に跳ね返ってくる。
俺は、今、生きている。
それを共有できる友がいる。≫

感動的な場面ですが、
「ラ・のべつまくなし」でいうところのニオう、て奴を感じました。


旅に出る夕士との別れ、打ち明けた時の回想
≪世界旅行に行くと長谷に打ち明けた時、長谷は俺に背を向けたまま、長い時間黙っていた。そして、やっと振り向いて、静かに言った。
「俺はお前の決心を尊敬する」
そう言い終えた時、長谷は、詩人が前に俺に言った「つるっとした」表情をしていた。俺には、そう見えた。≫
それまでの過去を乗り越えて、初めて夕士が未来へと歩き始めた瞬間。
それが、別れではなく新たな出会いへの旅路を予感させる希望に満ちた表情は、
明るいラストへ向けての彩りを添えてくれました。

足掛け、2年くらいかけてだらだら詠んだ作品ですが、これで終わりとなると、少し寂しい。

でも、次回作の料理本は楽しみ。

妖怪アパートの幽雅な日常(10) (YA! ENTERTAINMENT)

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