文学少女と慟哭の巡礼者

「2009このライトノベルがすごい」の一位に選ばれたシリーズだが、これも昨年に完結しています。こうしてみると、積ん読になってたのをようやく読み始めた感のある1冊です。

今回もガラスの破片でグサリと刺された後、サイダーで傷口を洗われたような痺れるような痛みを与えてくれました。ようやく琴吹さんが心葉に近づいたと思ったら、心葉の初恋のあの娘が出てきて二人だけでなく、周りの人間をもかき乱し、とことんまで傷つけ、傷つけられ、行き着く先は一体どこへ。そして、受験を間近に控えた文学少女の活躍は?

学生時代、国語の教科書に載ってた作品、あのころ読んで見えなかったものが、大人になって読むと新たな発見を感じさせてくれる。最近、安部公房を読み直している。昔は「不思議な話」程度にしか思わなかったのだが、改めて読み直すと、主人公の臆病さと傲慢さを繊細に描いた心理描写に驚いた。「安部公房ってこんなにすごかったのか!」と正直、背筋がぞくぞくした。


文学少女」はそんな新しい発見を与えてくれるきっかけとなる作品だ。練りに練られた文章の美しさ、絶妙な主題、そしてなにより、一番の魅力は作品を語るヒロイン天野遠子の本に対する純粋な愛情に他ならない。

ともすると、古臭い文章に感じてしまうかもしれないが、一度読んだら最後、
文学少女」はあなたの心の隙間にスッと入り込むでしょう。


それと、今回の主題となった宮沢賢治。一緒に読むと、面白さが2倍にも3倍にもなるはず。
どれも素敵だが、自分は「注文の多い料理店」が好きだ。「うまい話にはワナがある」というような今も昔も変わらない不変のテーマをユーモアたっぷりに描いていて、何度読んでも楽しめる。

これから暖かくなることだから、春には岩手の花巻にでも行ってみるのもいいかも。
小岩井牧場のレアチーズケーキがぜっぴんらしいです。


“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)