春季限定いちごタルト事件
ライトノベル風のミステリー小説は数あれど、ミステリーの皮を被ったライトノベルはまずこれに間違いないでしょう。
高校入学と同時に慎ましき小市民を目指す小鳩君と小山内さん。共に苗字に「小」がつくのに、物語を読むと、全然「小」じゃないところが笑える。こんなに面白い作品を放っておいたのは非常にもったいなかった。
それと、読後に驚いたのは、解説が「まいじゃー」でお馴染みの極楽トンボさんが書いていたことだ。解説でラノベ専門とはいえ、アマチュアのWEBサイトの管理人が解説をしてるとは思わなかった。解説文は、あまり分かってない人にありがちな、内容の筋を追うだけのくだらないものではなく、極楽トンボさんなりの分析を交えた穂信作品全体の傾向や特徴を分かりやすく捉えており、他の作品を読む上で参考になる読み応えのあるものでした。
「古典部」シリーズも「読もう読もう」思って放置してたから、早速購入することにしよう。
これまで、ミステリー作家として米澤穂信を分類してたが、今回のを読んで感じたことと、読後に調べたことを総合すると、この作品や「古典部」など、この人の作品は非常にラノベに近い気がする。
その理由の一つとして、なにより「だれも死なない」ミステリーということが挙げられる。
(ここら辺は巻末の解説をお借りしてます)
殺人事件を通りがかった高校生がなぞ解きをするような本格的なミステリーではなく、日常のちょっとした謎、例えば「毎日、庭に植えてある花が一本ずつ切られているが、なぜか切られた花は玄関のポストに刺さっている」みたいな。もしこんなことあったら気になりません?
ちなみに、今の例えは加藤登紀子の「百万本のばら」から連想してみました。
日常に潜むちょっとした不思議。あんなこといいな、できたらいいな。そんな某有名アニメの主題歌的幻想を文字に表現したのがラノベだと自分は考えてます。
(ノンフィクション作品すべてに言えることかもしれないが)
そう考えると、もしも毎日の登下校や通勤の合間にふと気になったことがあなたにあったなら、それは新たな物語への扉かもしれません。
- 作者: 米澤穂信
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