氷菓   愚者のエンドロール

読後に味わう久々の空虚感。それがどこからやってくるものなのか。

ともに米澤穂信の作品である。

誰も死なないミステリー。その一言で表すのは簡単だが、それだけでは
割り切れないものを感じてしまい、どうにもすっきりとしない。

それがなんなのか、はっきりと分からず今も悶々としている。

ただはっきりしているのは、作品全体に感じる距離感、いや、寂寥感が
決して読者を安心感に浸らせてくれない。

例えるなら、夜の砂漠のような、乾いているのに湿っている、何もないはずなのに、決して荒れているわけではない、それに似ている気がする。

何でもできると思っていた十代のころ、それが幻だと気づいた二十代、それでも学生時代の想いにすがりつく現在。

自分自身の存在価値を再認識させられたようで、無力感ばかりが結果として残ってしまった。
だが、それでも千反田の最後のセリフには救われた。生と死は似ているようで決して同じものではないと思えたから。



魂の成長を促す姉、それを受け止め期待に答える奉太郎。二人の見えないつながりの続きを
次回も楽しみにしよう。


氷菓 (角川文庫)

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愚者のエンドロール (角川文庫)

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