クドリャフカの順番

文化祭。自分が高校生のときを振り返ると、あまりにも思い出がなにもない。
思い出すことは、授業がなくなった代わりに、朝からサッカー部の部活動があった、ぐらいだろうか。

それに比べて、神山高校のなんと実り多き文化祭であろうか。

50以上の文化系クラブがここぞとばかりに張り切って行われる盛大さ。自分の思い出に見つからなくとも、この作品を読むことで多少なりともその埋め合わせができたと感じる。

今回も、我らが折木奉太郎氏が文化祭を大騒動に巻き込んだ謎の怪人「十文字」を相手に校内を所狭しと走り回り、八面六臂の大活躍をする……ようなことは決してなく、古典部の文集を売るための店番として、今日も今日とて省エネ精神に花を咲かせているのであった。

が、文化祭はそんな彼をよそに様々なイベントで大盛り上がり。悟志のライバル谷君の登場や摩耶花の所属する漫研では先輩との火花散る舌戦が展開され、はたまた世間知らずを絵に描いたようなお嬢様、千反田える嬢は意外な特技を披露して喝采を得る(しゃれじゃあない)など、どこをとっても読み飽きない。


この作品ではアガサクリスティの名作が文化祭で起こった事件で引き合いに出されているが、本編のラストまで来ると、松本清張「点と線」にも少し影響を受けているのかな、と感じた。どういうところが?と思われるかもしれないが、読み進めていくと、多分分かると思うので、そんなところも楽しみの一つにしてもらえればうれしいです。

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件