紫色のクオリア  憐  死なない男に恋した少女 

ここ2,3日は時間があったので、まとめて色々読んでみました。

紫色のクオリア
今まで、うえお久光の作品は読んだことなかったけど、これは凄い!大げさに言うのなら、ライトノベルの幅を広げた作品だと思う。ゆかりの持つかわいさやあどけなさの中に潜む残酷さ。マナブの一途なまでに歪んだ愛情は百合とか言ってる場合じゃないぐらい激しいし……。背反する性質を一人の人間に組み込む難しさをいとも簡単にやってのける構成の妙に打ちのめされた。まさかまさかのラストに驚きを禁じえません。これ、SFというよりホラーに感じたのは絶対に自分だけではないはずです。表紙の可愛さにだまされることのないよう一言申し上げておきます。

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

「憐」
ちょっと前に読んだ「月色プラットホーム」の作者、水口敬文のデビュー作。挿絵は何となく90年代前半のマガジンに載っていそうな、少し古めかしい雰囲気。
自分は、誰のデビュー作を読んでもわくわくしちゃうんです。「どんなの書いたのかな〜」とか「へぇ〜こんな作品でデビューしたんだ」など、過去を読み解くことで新しい発見が見えてくるのが面白いのです。ましてや、それが気になる作家さんならなおさら。今よりも荒削りながらも、全編通して感じる力強さや心情のこまやかさは今に通じており、定評ある少女の心情の揺れ動きを堪能させてもらいました。一度でいいから恋愛マンガ(もちろん純愛もの)の原作とかやってほしいですね。

死なない男に恋した少女
これは、上記の「紫色の〜」とは違った意味での怖さがあります。だって、殺人鬼ですよ!?どう考えても釣り合う相手なんていないでしょ、と思ってたら、なるほど確かにそれしかないわな、と納得。殺人能力に長けた生身の人間、恭子。不死能力を持つただの一般人、狗斗。
この二人を見てるとなんだか「3×3アイズ」のパイと八雲を思い出してしまった。かといって、全然内容は違うので、先が読めるということはないです。
強大な組織や敵との戦いに目がいってしまいがちになるが、ここで注目したいのは、恭子とりんの恋心。今のところ、ストレートに愛情を表現(刺されるだけだが)している恭子が一歩リードしているが、りんが下校中にほのめかすあの一言
「言わないよ。諦めてるんだ」
この一言が、切ない。誰もが抱く憧れと諦め。それがこの一言に集約されている。
これが今後、りんの心中でどう変化していくのか。
それが一番の楽しみかな。

死なない男に恋した少女 (HJ文庫)

死なない男に恋した少女 (HJ文庫)