さよならピアノソナタ2 3   宵山万華鏡

ピンポイントに心を貫く言葉を書かせたら、この人の右に出る人はいないんじゃないか?
案外、左には大勢いるかもしれないけど(笑)。

真冬の恋のライバルなのに、それを邪魔することなく真冬の気持に気づかない直巳に苛立つ千晶に好感がもてる。自分も好きだからこそ、直巳のそばにいるはずなのに、それを置いといて真冬の気持を尊重する健気さに心動かされる。

それにしても、まさか神楽坂先輩がラブトライアングルに参戦してくるとは思わなかった。合宿の夜に放った一言
ポール・マッカートニーはベーシストだよ?」
ここからの展開は、坂を転げ落ちていくようで、読んでて悲しくなってきた。
しかし、クライマックスのライブは鳥肌もの。不可能を可能にする先輩のすごさや千晶の力強さ、そして、全ての逆境を跳ね返す真冬のギターが新しい世界を作り出した。

なんだかこうして読んでると、全然直巳が頑張ってないようだけど、全編を通して読むと結局は直巳が全てを繋いでいるのだと気付かされる。まぁ、主人公だから当然か。


3巻では打って変って学校行事をメインにした短編仕立てに仕上がっている。
体育祭に文化祭と、先輩の暗躍に驚愕!

全体的にコメディ仕立てだから、面白おかしく読めた。

それでも、要所要所で読み手の心を熱くさせる言葉達は綺羅星のように輝いて登場人物だけでなく、我々の迷いも吹き飛ばしてくれた気がする。。

新キャラユーリは倒錯キャラ?真冬の分身的存在として、真冬の言えない気持ちをユーリは素直な気持ちを誰はばかることなく表明している。ここでまた一歩、ユーリを媒介にして二人の距離が近づくかと思ったら、真冬の復帰話がまた距離を作ってしまい、一人で悶々と悩む直巳に正直こちらも一緒に悶々としてしまった。でもその谷があったからこそ、文化祭でのライブ直前交わす二人の心の交流が読者を優しい気持ちにさせてくれた。


青春真っ盛りの彼らのラストはどうなるのか、4巻が楽しみでしょうがない。

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈3〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈3〉 (電撃文庫)


そして、森見登美彦の最新作「宵山万華鏡」。
くるりくるりと繰り返す。巡り巡るよ万華鏡。

ある一つのシーンをある視覚から多角的に情景を作り上げることを得意とする作者ならではの森見版「夏の夜の夢」といったところか。あくまで、話の展開が、てところね。

今作はどちらかと言うと、「きつねのはなし」に近いホラーテイストがちりばめられた作品で、ただ無邪気に楽しく読むというより、日常から離れた「祭」という「ハレ」の場が照らす明かりが生んだ影に潜む「ケ」に背筋がゾクリ……。

しかしそれだけで終わらないのが森見作品の面白さ。宵山様なるえらいお方が登場する「宵山劇場」は爆笑必至!

祇園祭宵山を舞台にし、それに合わせて刊行しただけに、是非とも今年の祇園祭に行った方は、読むべき。行かなかった方でも興味を持って読めますが行った人なら、より物語を深く楽しめること請け合いです。

宵山万華鏡

宵山万華鏡