しずるさんと底なしの密室たち  しずるさんと無言の姫君達 

これは思わぬ拾いものをした!
しずるさんとよーちゃんの二人のやり取りの中で展開される推理。

トリックを「ごまかし」と称して、たちまち見破ってしまうしずるさん。
それに寄り添うようにお手伝いをするよーちゃん。

相互補完し合いながら事件を解決する様は、さながらホームズとワトソンのような名コンビ。

安楽椅子探偵ものとしては、良作だと思う。
トリックは心理的なものがメインだから、本格派が好きな人には少し物足りないかもしれないが、文章も素敵な言葉ばかりで、一言一言が静かに胸に刺さってくる。

≪私は別に名探偵になんかなりたくない。
 事件の謎なんか解けなくたっていい。
 頭が良くなくたっていい。
 そういうのはしずるさんにやってほしいのだ。≫

よーちゃんの願望と本音を素直に導き出されたこの部分に、
いつまでもしずるさんに生きていてほしい切なる願いが込められていると同時に、
よーちゃん自身が変っていくことへの恐れが隠されている。

ま、そんな風に読み説いたからどうだってわけでもないのだが。
しかも、上記で書いた自分の意見は、次のページにしっかり書かれてたし。

ぶー。

気を取り直していきましょう。
ラノベなんだから、キャラにも目を向けてみると……。

よーちゃんの仕草や心情一つ一つが初々しくて可愛らしい。
動きの一つ一つにも今の自分にはない瑞々しさがあって、微笑ましさを感じる。

都心に出て、事故の現場を調べるときだって、交差点の周りにいる会社員の誰もが無表情で脇目もふらず歩いていることに、何か近寄りがたいものを感じているよーちゃん。

これひとつとっても、都会の空気におろおろしているよーちゃんの世間慣れしてない素直な性格が出てて面白い。

それに対してしずるさんのクールなこと。

読んでて尊敬しちゃいます。

≪彼女はただ偉いだけよ。そして偉い人というのは人に意見するだけで、
別に他人の意見を聴く必要はないのよ。≫

……なるほど。そういわれると、納得しました。

他にはこんなのも

≪世界というのは、そういうものがあるとみんなが思いこんでいること。それだけよ。≫

これにどうやって返せばいいのか。

北島康介の言葉を借りるなら、『なんも言えねぇ』ですよ。


一人ひとりの世界があって、それらがいくつも重なって成り立つこの世界は虚構なんでしょうかね。


考えても判んないことだらけ。
世の中不思議が多すぎる。でも、だから面白いんだけど。

そういえば、「ブギーポップ」の人だ。
最後の最後で思いだした。