スイートライン3 オーディション編

巻が進むごとに熱くなる「スイートライン
まるで80年代大映ドラマのような真っ直ぐな青春を感じさせてくれます。

いよいよオーディションに突入したが、「完全無欠の天使」秋宮涼子に挑むはるかと、おろおろとうろたえるばかりの永遠。

己の全存在を賭けてオーディションへと向かう彼女たちを中心に紡がれる台詞の数々は珠玉の名言ばかり。いつもは一回読んだら、その後にパラパラと流し読みを一、二回する程度だけど、この巻はがっつりと読み直しました。

読みやすいけど所々で古風な使い回しをしたり、ちょっとしたアクセントを入れて単調さを感じさせない文章は、スッと世界に入り込むきっかけを与えてくれます。


≪ちらっと眼を走らせると審査員の三名には明らかな披露の色が見える。ラフな格好の若い男性は先程からずっと目の辺りを指で揉んでいた。だが、三人とも選ぶ、という行為に付随する真剣さをずっと体に漂わせていた。短所を的確に炙る厳格さと少しでも長所を捉えようとするまなざしの鋭さ≫

オーディションが真剣勝負の場だということを感じさせる張り詰めた空気感がこの数行の文章から垣間見えてきます。


≪「……弟くん。覚えておきなさい。オトナになったらね、努力って当たり前なのさ。学生のうち、あるいはアマチュアの世界なら、努力したってこと自体は評価されるよ?でもね、真剣勝負の……何か本当にプロとして邁進するなら、何だってそうだ。サラリーマンだって大工だって板前だってきっとプロデューサーだって」
 豊国さんは落ち着いた声で俺に語りかけた。
 「成果だ。出来たことしか評価されない」
 足を組み、ちょっと背をそらし、一言一言区切るように、
 「だって、当然だろう?いい?努力はして当たり前なの、真剣勝負の世界では。じゃ、成果ってなんで出来ると思う?」≫

何で出来るのか?
それは、読んで確かめてもらいたいです。
10代にこういうことを言うのは厳しいですが、それが大人の世界なんだと伝えると同時に、自身の仕事に対する姿勢を答えている彼の真摯な態度に心打たれ、何度も何度も繰り返し読み込みました。この部分は社会人の自分にも改めて、仕事に対する姿勢を考えさせられるものでした。

≪「なあ、あんたさ、何か死ぬほど真剣に物事に打ち込んだことはあるか?」≫

主人公、正午の問いかけにあなたなら何と答えますか?単に読むだけでなく、いつも何かしらの問いかけを投げかけてくる「スイートライン

勉強や部活に仕事など、人生に行き詰ったときに読んでもらいたい一冊です。

でも、そんな中にも
≪「だめですよ〜、正午さん。だめです、あれは敵です!」≫
とはっきり断言するはるか。

誰が敵なのか?それも読みどころ。


ラノベ版「ガラスの仮面」の「スイートライン
隠れた?名作です!!