まよちき5

<涼月は、キスすら出来そうな距離で、いちごジャムみたいに甘い声で囁いて――。
 
 「………………ジロぅ」
 
 「〜〜〜〜っ!やめろ!その口調で俺を呼ぶな!」>

<「えへへ、兄さん――大好きっ」
ゴキゴキと背骨の鳴る音と一緒に、胸の中で妹の甘い声が聞こえた気がしたが、それを確かめる間もなく、俺の意識は遥か彼方へと飛んでいった。>

<「でも、ほら……これならわかりますよね?」
 「ぐっ……!」
 た、確かに!
 超至近距離。漂う女の子特有の香り。しかもコイツがやけにぎゅぅぅぅっと抱きついてくるせいで俺の身体にあたるふみゅふ……ぎゃあああもはや上手く表現できない!
 すごく簡潔に説明するとかなり弾力があってけれど柔らかい双つの塊が俺の身体に当たってああああああああああっ!>

<……な、なんだこれ。
 目の前に広がっている光景。
 露出度的には、ミニスカートを穿いているのと大して変わらない。
 なのに――。
 「――っ!」
 ヤバイ!>

<――彼女は。
 どこかせつなそうな表情で、ワインを浴びた俺の首筋に顔を近づけて――。
 「……んっ」
 ぴちゃっと。
 小さな音を立てて、首筋についたワインを真っ赤な舌で舐めとった。
 「〜〜っ!お、おおおおおまえ!何してんだよ!」>


と、ものの見事に各キャラそれぞれがヒロインとして登場する短編集。チョイエロな展開に期待しつつも、いつも寸止め。だが、それが堪らないカタルシスを産み出す!

キャラ立ちしてるから、大した物語がなくても楽しめます。ラストでは、自分の気持ちに気付き始めた奏の挿し絵と文章のマッチングが絶妙です。MF文庫はいつも、挿し絵の入れるタイミングが上手い。神様家族と同じ担当なのかしら?

まよチキ!5 (MF文庫J)

まよチキ!5 (MF文庫J)